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スーパーボール

第12章 エンジェルクッキー*にのあい*視線

そうだ。
俺、死んだんだ。

「ね。和也」

雅紀は会いに来てくれたんだ。
四回も。

俺だけのために。

「そんなことない…」

涙がボロボロ落ちて、
地面が濡れることなく消えていく。

「和也、バスケ好きだよね?」

「うん。好きだよ」

俺、エースでレギュラーだった。

「このボール、俺がもらってよかったのかな?」

雅紀が俺に手を差し伸べる。

「…握れないよ」

「和也、好きだよ」

握れないはずの手を引かれて、
抱き締められる。

「雅紀…」

「俺、このボールと生きていく。だから和也は俺を見てて」

「でも…」

「俺は、バスケが好きだよ。教えてくれたのは和也だよ」

この公園で、雅紀にバスケを教えた。
この公園で、雅紀に出会った。

「だから…許して」

雅紀を許す?

逆だよ。

「死んだ俺も許して…」

「許すなんて…」

雅紀が俺の涙を拭った。

「和也、冷たいね」

「だって…死んでるから…」

「俺の体温、忘れないでね?」

「うん」

最後に、冷たい唇と温かい唇で
キスを交わしたのだった。

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