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彼女の恋愛

第10章 暴走彼女

二人の成り行きを見守っていたくるみだったが、これには当人達よりも照れて回れ右をして来た道を戻った

(なつみのやつ、大胆だな…でも元どおりになって良かった)

ふふと自然に笑みが零れ、顔を上げると少し離れたところで村瀬が怪訝な顔でくるみを見ていた

「村瀬くん!あの、ちぎゃくて…」

恥かしさに早口になり吃(ども)ったくるみを口に手を当てて堪える村瀬

「もう!笑わないでよ」

「申し訳ありません。一人でニヤニヤしてたと思えば、慌てるくるみは面白いですね」

「ハイハイ、笑ってください!普段笑わない村瀬くんに笑ってもらえるなら光栄ですよ!」

恥かしさからかつい喧嘩腰になってしまい、プイッと村瀬を無視して歩き出した

「くるみ? 怒った顔も可愛いね…」

「…あなた、だれですかー⁉︎」

敬語以外の言葉を初めて聞いたが不自然過ぎて鳥肌が立った

「あ、振り向いてくれた。バカなことをした甲斐がありました」

「っ! もう知らない」

スタスタ歩くくるみの数本後ろを歩く村瀬

チラッと後ろを振り返るとピタっと止まり、また歩き出すと村瀬も歩き出す

「村瀬くん、やめてくれる?」

「…くるみの事を怒らせてしまったので僕は隣を歩く資格はありません。かといって先に行くのも淋しいですし…」

「もう、やめて!」

くるみが村瀬の横に来て肩がけのスポーツバッグを引っ張ると村瀬も歩き出した

「最近よく会うね!練習試合は終わってたでしょ?今まで何してたの?」

「よくご存知ですね。誠に残念ながら試合は矢川の活躍で勝ちまして、用無しの僕は学校で自主練してアイシッングしていました」

「…お疲れ様。怪我明けなのに無理しないでね?」

「くるみは何でニヤニヤしてたんですか?」

「妹の恋を応援していたの。やっぱり両思いっていいよね!」

「俺とくるみみたいな?」

また不自然なタメ口でもう!と怒りかけたがふっと笑う村瀬に不覚にもときめいてしまった

「そのタメ口やだ!村瀬くんぽくない」

「はい、俺も言ってて寒気がします」

「じゃあやめてよ?」

「くるみの反応が面白くてつい…」

また口を塞いで笑いをぷるぷる堪えている村瀬を見てムッとしたくるみはお返しのつもりで言った

「そんな事ばかりしてたら嫌いになっちゃうよ?隆盛」

村瀬は眼鏡越しにでもわかるくらい目を大きく見開いて硬直した

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