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彼女の恋愛

第10章 暴走彼女

くるみは自分の仕返しが成功したと確信してまた歩き出そうとすると村瀬の胸の中に引き戻された

「きゃっ!村瀬くん⁉︎危ないでしょ…」

「…二度とやりませんから、嫌いにならないで下さい」

ギュッと強く抱きしめられてくるみは困惑した

「ごめん、笑われた仕返しに冗談で言っただけだから離して?」

「…もう一度名前を呼んでくれるまで離しません」

「村瀬くん、離して」

「…」

頑なに離さない村瀬。ますます強く抱きしめられている気がする

「隆盛…離して?」

「もう一回…」

「隆盛」

5秒程間があったがゆっくり手を離した

くるみが振り返って見てみると耳まで真っ赤にした村瀬の顔があった

「なんで村瀬くんが照れてるの⁉︎」

「くるみに名前呼ばれたら普通、照れますよ」

「だって抱きしめたり大胆なことしてるじゃん!」

「それは俺がしてるだけでくるみからしてる訳じゃないですから。今回はくるみから言ってくれたんですよ?」

「村瀬くんって変わってるよね」

「よく言われます」

「…隆盛?」

また赤くなる村瀬、ジッと照れながらくるみを見る

「やめて欲しいのにやめて欲しくない不思議な気持ちです」

「今度村瀬くんに困ったことされたら名前で呼ぼうっと♪」

「時と場合によっては逆効果かもしれませんよ?現にいまくるみにキスをしたい衝動に駆られているのを必死に我慢しています」

「だ、ダメだよ!」

「ケチですね」

「ケチじゃないよ、当たり前でしょ」

「そんなの誰が決めたんです?理論的にお願いしますよ?」

「私は…陽と付き合っているから」

「それだけ?」

「…それだけかも。私の気持ちはよくわからない…誰が好きで誰とキスしたいか…もう良くわからないよ」

村瀬は俯いたくるみの肩を抱いて眼鏡を外した

「…じゃあ俺の事だけ考えてください。俺を好きになって…」

くるみの顎を持ち上げてキスをした

くるみはなぜかそのキスを拒むことが出来ずただ受け止めていた

時間にすると5秒くらいだが、長い時間村瀬とキスをしていた様な錯覚に落ちた

どちらともなく唇が離れるとくるみは真っ赤になってその場から走り去った

村瀬に呼ばれた気がしたが、くるみは後ろを振り返る事なく無我夢中で家まで走った

ドアを開けて息を整えるとリビングからおかえり〜と菫の声がした

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