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「…わかった」

葵は立ち上がると無言で外に出て行った

「お母さん、いいの？」

「いいの。これでいいの…二人とも今日はご飯何しようか？」

「ウチは帰る…葵が心配だから」

菫は玄関のドアを開けると振り向き美羽に向かって口を開いた

「ママさん、確かに葵はまだ未成年だし若いけど誰よりも優しくて相手の事を考えるし信用できるヤツだよ？私が保証する」

「菫ちゃん、気をつけてね？」

美羽がにっこり微笑むと菫はシュンとした顔で外に出て行った

「お母さん本当にこれでいいの？」

「いいの、これで」

美羽がまたにっこり微笑むとくるみは胸に針が突き刺さるような感覚を覚えた

「でも…お父さんと一緒に暮らしていた時の顔してる。私、お母さんのその笑い方大嫌い」

部屋のベッドに入って頭から布団を被りヘッドホンをつけると、ボリュームを上げて目を閉じた



（いつの間にか寝ちゃってた？）

目を覚まして布団から出るといつもの部屋ではなく、記憶から消し去りたい部屋の風景

重い空気で息が詰まりそうになり、どこからともなく嫌な汗が滲み出る

（落ち着いて…これは夢だから…早く覚めて…）

ガシャーン！

皿が割れる音にびっくりして辺りを見回す

美羽のすすり泣く声が聞こえたと思うと、泣くんじゃねー！と怒鳴り散らす男の声

（やめて…聞きたくない…）

くるみはいつものヘッドホンを探すが見つからない

バシっ！ドカッ！

やがて聞こえてくる鈍い殴られる音

「お父さんやめて！」

音のする方に走りドアを開けるとジロリと自分を睨みつける血走った目とボコボコに殴られて変形した美羽の顔

「キャーーーーーーー！」




「ねぇ！お姉！ 起きて！」

「ハァっ、ハァっ…」

目を覚ますといつもの部屋で耳から大音量の音が流れる

なつみが歌を止めてくるみの顔を心配そうに見つめた

「大丈夫？ またあの夢？」

汗びっしょりで涙を流すくるみをなつみが抱きしめる

「お姉！ここにはお母さんと私たちだけ。大丈夫」

「…もう大丈夫。ごめん」

「最近見てなかったから安心してたけど何かあった？お母さんも晩御飯の後に仕事以外で珍しく出かけるって出て行ったよ」

「今何時？」

「もう23時28分だよ、何か食べる？」

「ううん、平気！ 瑛人くんとスカイプの時間でしょ？行きな」

「でも…」