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彼女の恋愛

第17章 不思議の国の彼女

猫に優しく抱きしめられながらフッと辿り着いた先は湖のほとりだった

辺りを見るとまだ双子の森からは出てはいないみたいだ

「くるみちゃん…ごめんな?俺がもっと早く気付いていればこんなに汚れなかったのに」

「ううん、良輔さんを見てホッとしました…」

少し離れると猫は優しく話しかけた

「くるみちゃん、湖でクリームを流した方がいい。魔法で綺麗にしてあげたいけどここでは俺は使えないから」

「でも…」

「洗い流したら数回に分けて俺の家にテレポートするから大丈夫だよ。双子はまだ俺達を捜している筈だから早くした方がいい。ベタベタで気持ち悪いでしょ?」

「わかりました」

くるみは急いで湖に近寄ると中に入ってクリームとチョコでベタベタになった髪と体を洗い流した

「綺麗になったかな?じゃあ行くよ」

猫に抱きつくとパッと景色が変わり森の中のコテージにいるようだ

辺りを見渡すとセイウチと大工という本がある

「ここは双子の家だよ」

良輔が説明して棚からタオルを取ってくるみに渡した直後にウ〜とサイレンが鳴り響いた

「なんだ、この音は⁉︎」

「あ…楓さんが作った侵入者警報機かも」

「ここじゃやばいな…移動しよう」

猫が移動しようとした瞬間にフラっとよろけて倒れてしまった

「良輔さん⁉︎ 良輔さん、しっかり!」

後ろから声がした

「俺達を出し抜こうなんて100年早えーっつーの!」

「まさか家に来るとはとんだお馬鹿ちゃんだな」

ディーはライフルをポンポンと叩いて、ダムは指をパチンとならして棺を出すと猫を担いで放り投げた

「良輔さん! …まさか葵さん、撃ったんですか?」

「残念ながら麻酔弾だけどね」

麻酔と聞いてホッとしたがダムは猫の入った棺をガンガン釘を打ち付けている

「ちょっ、楓さんやめて下さい!」

「やだ。こいつ気に入らない」

パチンと指を鳴らすと棺の下に穴が開いて、猫の入った棺は暗い底に消えていった

「なんて事を…」

「大丈夫だよ、くるみちゃん。これくらいじゃ猫は死なないから」

ディーがポンと肩を叩いてくるみが持っていたタオルでくるみの濡れている頭を拭き始めた

「そうそう、女王に首を撥ねられない限り死なないよ」

ダムはもう一度指を鳴らすと穴はみるみるうちに塞がっていった

「女王ってそんなに怖い人なんですか?」

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