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彼女の恋愛

第7章 不穏な予感の彼女

「生憎、他人と話すのは好きではありません」

「でも人間1人じゃ生きていけないからコミュニケーション能力は必要だと思うけど…」

「あなた以外は特に必要ありません」

当たり前のように言う村瀬にくるみは顔が赤くなった

「ごめんなさい、でも私は陽が…」

「諦めません」

「そ、そう…」

沈黙しながら歩きくるみのマンションの前についた

「それでは」

「うん、バイバイ」

村瀬の後ろ姿が見えなくなるまで見ていたら一度振り返ってこちらを見た

電話が鳴る

「もしもし」

「家に入らないのですか?」

「なんか送ってもらっちゃったから見送ろうと思って。森野家のルールなの」

「…早く家に入ってください」

「わかった。ありがとう!」

「…さようなら」

村瀬が笑った様な気がした



夏休み初日

くるみは補修の為に制服で登校していた

暑い日差しがジリジリ照りつける

教室でぼーっとしていると補修が始まった

補修が終わり下駄箱で靴を履き替えていると何人か生徒達がバタバタしている

「体育館で喧嘩だって!」「殴り合いらしいぞ!」

くるみは嫌な予感がして体育館に向かった



体育館に入ると大きい輪の様に人が群がっていた

誰が喧嘩しているかはわからないが何となくバスケ部っぽい

輪の中心にひょっこり背の高い眼鏡をかけた村瀬がいた

と、いうことは…


「くるみちゃん!そうか、補習で来ていたのか」

相悟がくるみに気付いた

「相悟くん、なんの騒ぎなの?」

「いま説明する暇がなくて、陽を止めてもらえる?」

「わかった! 真ん中まで行くの手伝って?」

「了解!」

相悟がくるみの手をひっぱって輪の中心に向かう

中心に辿り着くと陽と村瀬が先輩たちに抑えられながら争っていた

陽より村瀬が先にくるみの存在に気付いた

後ろから抑えていた先輩の手をするっと抜けて陽に駆け寄ろうとしたくるみを担ぎ上げ全速力で外に向かって走った

「きゃあっ!」

「くるみ⁉︎」

「くるみちゃん‼︎」

追いかけようとする陽を先輩達が頭を冷やせと取り押さえた




村瀬は屋上までくるみを担いで走った

はぁはぁと肩で息をする

「もー! 降ろしてよ」

申し訳なさそうにくるみを降ろして座り込み息を整える

怒っていたくるみだがカバンからアイスティーを取り出し村瀬に渡した

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