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彼女の恋愛

第7章 不穏な予感の彼女

「邪魔です」
「邪魔じゃないー!」

相悟がくるみを引っ張ると簡単に村瀬は離した

「村瀬、こういうやり方は良くないかな。さっきの喧嘩もらしくないと思ったけど原因はくるみちゃんなのか?」

「へ?」

くるみはなぜ自分に原因があるかわからなかった

「…3分の1はそうですね」

「陽とくるみちゃんの間にお前の入る隙なんてないと思うよ?」

相悟はわざと冷たく言い放った

「僕は…ずっと森野さんを見てきました。いつもスーパーの買い物袋を重そうに持ってたり、妹達と笑いながら歩いているところを。自分の時間すら持てなくても明るく笑顔の彼女にいつしか恋をしました」

くるみは村瀬の口調の所為か綺麗な詩を読まれているような気持ちになった

「彼女に想いを告げようと決めて練習試合の日にダンクを決めたら告白すると決意しましたが、時すでに遅く一度は諦めました」

相悟は黙って聞いている

「しかし諦めた瞬間に以前とは比べものにならない程強い感情が溢れて…今では彼女以外は何もいらないとさえ思います」

「くるみちゃんはどう思っているの?」

相悟がチラっとくるみに視線を移した

「村瀬くんには何度も自分の気持ちは伝えているよ? 私は陽が好きだからごめんなさいって。でも村瀬くんってなんだか憎めなくて…だから陽が彼を誤解しているのは嫌かな」

「お人好しだな」

相悟はくるみに向き直る

「話を聞いて思ったのは村瀬は勝手過ぎ、くるみちゃんを諦めて陽とちゃんと話せ。それとくるみちゃんはどうも隙が多いな」

「多くないよ!…わっ!」

相悟が間合いを詰めてくるみを抱きしめた

「ホラね? これじゃ陽も可哀想」

わざと耳元で囁く相悟

「そ…うご…く…離して!」

「あれ?もしかして耳弱い?」

相悟からくるみを引っ張って離す村瀬

「宮澤、やめろ」

「…冗談だよ」

相悟は参りましたと言わんばかりに両手をあげた

「ね? 隙だらけ…少しは危機感を覚える様に」

「…ハイ。じゃあ私は陽と話してくる!村瀬くんはちゃんと陽に話してね?」

「努力します」

屋上から体育館までの長い距離を歩いて先ほど村瀬が自分を担いで走ったことが信じられないくるみであった

体育館に戻るとすでに練習が再開していて陽の姿はなかった

近くにいた部員に部室で頭を冷やしていることをきいて部室に向かった


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