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彼女の恋愛

第8章 夏休みの彼女

もう一人が良輔めがけて殴り掛かろうとしたが、良輔に届く前に交わされ鳩尾に1発入れられた

男は膝から落ちてグエッと吐き出した

「くるみちゃん、走れる?」

「はい!」

良輔がくるみの手を握って走り出した

しばらく走ると神社が見えたので良輔はやしろの前にある階段にくるみを座らせた

良輔はしゃがんでくるみの下駄を脱がせると鼻緒のあたる親指と人差し指の間が赤く皮が剥けていた

「あちゃー!随分無理させたな。くるみちゃんここで少し待っててくれる?ここは会場から離れてるからあいつらも来ないと思うけど、念のため携帯教えて?」

くるみが素直に携帯の番号を教えると待っててね!と走り出した

(陽の言っていた隙ってさっきの人達みたいな事なのかな…よくわからない)

陽の青ざめた表情と走り出した後ろ姿を思い出して知らぬ間に涙が溢れていた

両手で顔を覆って俯いて良輔が戻るまでに冷静になろうとするが、反して涙は止まらない

(落ち着いて、落ちついて、落ちついて…)


息を切らしながら良輔は走っていた

コンビニでマキロンと絆創膏とティッシュといちごのチョコレートを買って神社に戻ると俯いたくるみが見えた

心なしか肩が震えているのをみて泣いているのが解ると思わず駈け寄って抱きしめた

「くるみちゃん、怖かったよな。あんなのは早く忘れる事だよ」

優しく話しかけるとくるみは頭をゆっくり振った

「違うん…です。彼氏と喧嘩しちゃって…誤解させちゃって…」

「…」

良輔は黙ってくるみの話を聞いた

くるみはいきさつを簡単に説明し、自分は身に覚えがなくむつみも嘘をつくはずがない事を話した

「もう何がなんだか全くわかりません…でも彼の傷付いて青ざめた顔が忘れられなくて」

良輔は黙って聞いていたがコンビニの袋からティッシュとマキロンを取り出した

「ちょっと染みるけど我慢してな?」

「いった!」

くるみは痛さに顔をしかめたが、口の中に甘さが広がった

くるみが痛いと口を開いた時を見計らってチョコをすかさず入れたのだ

びっくりするくるみの顔を見て良輔は優しく微笑んだ

「サプライズ。びっくりした?」

「びっくりしました。甘い…」

「くるみちゃんは笑った顔が一番良い。だから泣かないで?」

良輔は優しく傷に絆創膏を貼った

甘いチョコレートは優しい味がした


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