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彼女の恋愛

第8章 夏休みの彼女

「花火大会だからって浮れていたから君と一緒だと思ったけど?」

圭は少し不機嫌そうにくるみに話しかけた

「そうだったんですけど、一方的に怒らせてしまって…逸れてしまったんです。電話も出ないので家に戻っているかと思いましたが…」

「何があったか知らないけどあいつ単細胞だから気にしなくていいよ。君が来たことは伝えておくから」

「…はい。ご迷惑おかけしました」

くるみは頭を下げて帰ろうとするとちょっと待ってと圭は玄関のドアをかけた

「勉強していたけど夜食が欲しくなったからコンビニついでに駅まで送る」

「え!大丈夫ですよ」

「どうせ同じ方角だし、別々に歩いたらなんか気まずいじゃん」

圭はスタスタ歩き出した、くるみも後を追って歩き出す

「で、あいつのどこがいいの?」

「え?」

「チビでバカで単細胞で容姿も中の下で長所は健康なことくらい。で、どこがいいの?」

「私に持っていないところ全てです。陽の人懐こくて誰からも好かれるところや、自分の感情を素直に表現できたり…」

「ふ〜ん、きみって変わってるね?」

「そうでしょうか…」

しばらく歩くと駅が見えてきた

「じゃあ俺はこっちだから。花火大会で変なやつも多いし、気をつけろよ」

「ありがとうございました。勉強頑張って下さい」

ペコッとお辞儀をすると圭は少し恥ずかしそうにそそくさとその場を後にした

(家に戻っていない。一体どこにいるの…)

思考をフル回転させて考えていると後ろからぽんっと肩を叩かれた

さっきと似たような展開に嫌な予感がして振り向くとそこには村瀬が立っていた

「こんなところに一人でそんな格好で立っていたら危ないですよ」

「村瀬くん…あなたも花火大会に?」

「僕は人混みが苦手なのであの様な場所は考えられません。家庭教師のバイトの帰りです」

「バイトしているの⁉︎」

「知人に頼まれて3ヶ月だけ教えることになりました。で、あなたは何故この様な場所に一人でいるのです?」

「陽とはぐれちゃって…電話に出ないから家に戻ったと思ったけど留守だったの」

「…そうですか。しかしあなたを一人にするなんてあり得ませんね」

村瀬の言葉を聞いて良輔を思い出した

「…」

黙って下を向いているくるみに村瀬が肩を叩こうとするとその手は横から来た圭に止められた

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