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彼女の恋愛

第8章 夏休みの彼女

菫との連絡を終えると目をつぶって陽のいきそうな場所を考えた

(陽…どこにいるの…?)

近くではどす黒いオーラの罵り合いが続いていて考えがまとまらない

「…あ〜もう! 2人ともうるさいです!!」

くるみの剣幕に2人はきょとんとして黙った

顔をあげると反対側の道路に陽の姿が見えた

陽の隣にはキャピキャピはしゃぐ浴衣を着た女の子が2人居た

「陽!」

くるみが大きな声で呼ぶと隣にいた村瀬と圭も反対側の道路をみた

陽も女の子達もこちらを見る

「…」

陽は3人をみると反対側にスタスタ一人で歩いて行こうとして女の子達が慌てて追いかけている

それをみて圭がなんだあいつ⁉︎と怒って村瀬は今にも襲い掛かりそうな体制になっている

くるみは考えるよりも先に動いていた

全力で走って陽に駆け寄り、陽の手を取って再び走り出した

陽は思いもよらないくるみの行動に虚をつかれ、しばらく走ったがやがてくるみの手を振りほどく

「…離せよ。俺より村瀬がいいんだろ?」

「はぁはぁ…それ、本気なの?」

くるみは陽をじっと見据えた

「むつみは誤解しただけなの。説明するからちゃんと聞いて?」

「誤解も何もハッキリ言ってたじゃねーか!」

陽は怒っているのか哀しんでいるのか分からない顔をしている

「…冷静になってくれないと話せない」

「じゃあなんでさっき村瀬と一緒に居たんだよ!」

「陽が他の女の子達と一緒に居たのと同じ理由だと思うけど?」

「あれは勝手に着いてきただけだ!それに今は村瀬の話をしてるんだよ!」

「陽を探している時に偶然会っただけだよ」

「嘘だ!」

「本当だよ。隣に圭さんも居たでしょ?陽とはぐれて電話も出てくれないから陽の家まで行ったの。心配した圭さんが駅まで送ってくれて別れたところに出会ったの」

「圭が?」

「私を信じられないなら圭さんに聞いて」

「だ、大体なんでむつみちゃんがあんな勘違いするんだよ!」

「冷静になったら話す」

「俺はずっと冷静だよ!」

陽がさっきよりも大きい声でくるみを怒鳴りつけた

くるみは黙って見据えていたが一つの影がゆっくりこちらに近づいて来るのを見てハッとした

気付いた時には良輔が陽の肩を叩き、振り向きざまに思いっきり殴りつけていた

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