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彼女の恋愛

第9章 倦怠期な彼女

村瀬がくるみに本を渡す

「ありがとう!」

くるみは受け取るとすぐ本に目を戻した

「今日は勉強しないのですか?」

「今日は恋愛の勉強しようと思って…」

「矢川とうまくいってないのですか?」

本から顔をあげて村瀬をみる

「…そんな事ないよ」

「そうですか…」

村瀬は棚を見ながら本を物色している

「病院は?ケガ大丈夫だったの?」

「2週間程、安静にしろと…」

「大会ギリギリだけど、間に合うといいね」

「休んでるし大丈夫です。貴方の方が心配です」

「なんで?」

「そんな本いくら読んでも解決しませんよ?直接、矢川と話す方が早いです」

「…話したけどダメだったんだもん」

くるみはパタンと本を閉じて、片付け始めた

「話して納得しなかったんですか?」

「うん、仲直りしたはずなのにモヤモヤが消えなくて」

本を棚に戻そうと背伸びしたところを後ろから村瀬が手伝う

「ありがと…」

振り向きざまに村瀬が一歩前に踏み出た所為で、くるみは本棚に軽く背中がぶつかった

逃げないように腕を顔近くの本棚に置いて、村瀬は屈んでゆっくり顔をくるみの耳元に近づけた

「矢川と別れたら教えて下さい。僕がうまくつけこみますから」

「…っ、別れないよ」

退いてと村瀬を押してみるがビクともしない

「いつでも待ってますよ。僕は…俺は貴方が大好きですから」

顔を離す時にくるみの目を見つめてフっと笑った

普段ぶちょう面の村瀬に笑われて不覚にもドキっとしてしまったくるみはハッとして村瀬を押して離れる

「これ借ります」

村瀬がいつの間にか棚から本を取ってくるみに渡す

「TheABC…これ翻訳なら読んだよ、懐かしいな」

「貴方も好きとは意外ですね」

「昔、探偵に憧れて沢山読んだから。それはいいとして貴方ってやめて」

「なんて呼べばいいですか?」

「くるみでいいよ」

「…くるみ…」

「いま貸出ノート記入するね」

書いて本を渡すと村瀬はぺこっと頭を下げた

「さようなら、くるみ」

「気をつけてね」

村瀬が去った後、恋愛の本をちらっと見たが全て片付けて棚からアガサクリスティの火曜クラブを取って読みふけた

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