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彼女の恋愛

第9章 倦怠期な彼女

「お前には関係ないだろ。それともヒーロー気取りでくるみの点数稼ぎたいのか?」

おちょくる様に笑いながら話す相悟を相変わらずの仏頂面で見下ろしていた村瀬だが、ふーとため息をついた

「お前は相手にする価値もないな」

そう言い放つとくるみの手を取って図書室を出て歩き出した

「…村瀬くん、何処行くの?」

くるみが口を開いてようやく村瀬は足をとめた

「すみません。何も考えていませんでした」

「さっきはありがとう。でも大丈夫だよ」

そう言いながら俯いたくるみの横顔はとても大丈夫そうではない

「とりあえず座りませんか?」

二人は旧校舎の階段に腰掛けた

「まさか宮澤もくるみの事を好きだとは考えもしなかったです」

「前に忘れてって言われたんだけどね…」

「…また邪魔者が増えてしまった」

くるみは笑いながら静かに語り出した

「今まで男の子に好きって言われたことなくて陽が初めてだったの。それなのになんで今こんな事になっているのか、自分でも解らない。少し前の私はドラマや小説のような恋愛に憧れていたけど…もう嫌だ」

「すみません…」

村瀬が謝ったのでくるみは慌てて謝った

「私の方こそ自分の事ばかりでごめんね!村瀬くん話しやすくてつい愚痴っちゃった」

「そのような事を言われたのは初めてです」

「私、普段は聞き役が多くてあまり自分のこと話したりしないんだけど…不思議だな、気が楽になった」

「いつでも愚痴ってもらって構いませんよ。僕が言うのもなんですがあまり抱え込まないで下さい」

「ありがとう」

くるみはスッと立ち上がってスカートについた埃を払った

「村瀬くんコーチに呼ばれてたのに付き合わせてごめんね」

「…起こして下さい」

村瀬が右手をくるみに差し出すと一瞬困った顔をしたが、くるみは手を掴むと引っ張った

「わっ!」

起こそうと力を入れたと同時に強い力で引っ張られて村瀬の胸元に倒れるように転び、しっかり抱きとめられた

「…すみません。痛くなかったですか?」

「こんな事だろうと思ったからね」

「抱きしめられると思ってたのにやってくれたのですか?スゲー嬉しい…」

ギュっと抱きしめる腕に力が入る

「ち、違う!引っ張られるのを解ってただけ!」

くるみがもー!と怒って村瀬の胸を強く押すと、仕方ないですねとあっさり引き下がった



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