テキストサイズ

starting grid

第3章 ~悪夢~

「やばい、吐きそう。」

喉が潤った後で、直生はそうこぼした。

胃の中に大したものも入っていないはずなのに、起き上がった瞬間に吐気まで上がってきたような気がした。
直生は思わず口元に掌をやり深呼吸を繰り返す。

「直生、薬持って来ようか?」

珍しく凜が心配げな表情を浮かべている。

「…いい、…要らない。ちょっと、シャワー浴びてくる。」

重い身を起こし、直生はそういい残すとシャワールームへと足を向けた。

 その後、シャワーを浴びて栞に紅茶を入れてもらい少し落ち着いた直生は、午前三時を少し回った頃になってようやく眠りについた。



 決勝当日、朝から彼女を迎えに行ったついでに病院へ足を運ぶと、直生は入念に固定をしてもらい…息をついた。

「本当に、これで大丈夫なんだろうな?」

ブツブツとそうこぼしながら、直生は彼女を引きつれ、パドックへと戻る。

「あの、私…一時間前にはナレーターの仕事が。」

「うん、解ってる。それまででいいから、この書類の束を分けてもらえないかな?…俺、こういうの苦手でさ、困ってたんだよね。」

パドックに無理やり作った直生の作業テーブルに山積みに置かれた書類の束…。

それを眼前に、花音は胸中で呟く。

(この量は、無理でしょ…。)

ストーリーメニュー

TOPTOPへ