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第5章 ~過去の片鱗~

「直生のこと、本当に全く興味がないなら……ちゃんと振ってやって貰える? 

傷口が浅いうちの方が回復も早いと思うからさ。」


「全く興味がないわけじゃありません。

…ただ、直生さんって本心が見えなくて…

だから、少し警戒してるっていうか……。」


直生はいつも優しい。

気を遣っているのか素なのかは分からないが……、

花音が退屈しないように分かりやすい話題や話し方をしてくれる。


それでも、直生の本音が何処にあるのか花音には分からなかった。


「直生はソツがないからさ、本音が何処にあるのか良く分かんないところもあるけど。

直生が花音ちゃんに惹かれてるのは本当だと思うよ?」


直生の花音に接する態度は、颯太の知る限り……遊びで女性たちと接する態度とは明らかに違っていた。

直生は本命以外は割り切った態度を崩さない。

けれど、花音に接する時は、高校時代に栞にストーカーをしていた時の眼差しと変わらなかった。

珍しく彼女に本気なのだろうと颯太は思った。


「……。」


花音は何も返せなかった。


直生の事が決して嫌いなわけじゃない。

直生の端正な顔立ちで見つめられると、花音だってドキッとしたりもする。

少し強引なところも花音は嫌いではなかった。

ただ、遊び人…そのレッテルが花音の気持ちにストップをかけていた。

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