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第5章 ~過去の片鱗~

「直生のこと、嫌いじゃないなら…真剣に考えてみて欲しいな。


あいつを遊び人にした一端は俺だから、こんなこと言うのも何なんだけど…


直生には本気で溺れる女性と幸せになって欲しいんだ。」



何も言わず黙ってしまった花音に、颯太はそう言うと…出入り口のほうへと視線を向けた。


電話を終えたらしい直生がちょうどこちらへ向かって来ていた。


折れた肋骨が痛むのか脇腹に掌を乗せている。



「悪いな。話の途中で……。」



直生はそう言って、再び席に着いた。



「いや…。何かトラブル?」



穏やかに笑みを浮かべて返してくる颯太に、直生は曖昧に笑みを浮かべる。



「あー…、まぁ。


そんなに大事じゃないんだけど、輝瑠のヤツがパニック起こしててさ。」



「あぁ。輝瑠くんが今仕切ってるんだっけ? 


後始末大変そうだね。」



納得したように颯太はそう頷きつつ、直生の抑えている脇腹に眼を留めた。



「直生、痛み止め切れた?」



「……多分ね。颯太、予備持ってる?」



「一応ね。あるけど、一錠しかないから寝る前にしとけよ。」



颯太は鞄の中から錠剤を取り出し、直生に手渡す。


直生は愛想笑いを浮かべてそれを受け取った。



「サンキュ…。さすが、颯太。」

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