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第5章 ~過去の片鱗~

「自覚があるなら正常だよ。


俺からすると、遊び人のお前の方が格好悪く見えるけど?」




「だって、独りは寂しいし。


……かといって、二の舞は嫌だし。


大体、別に口説いてる訳でもないのに向こうから寄って来るんだもん。」




言い訳がましくそう言う直生に、颯太は眉をひそめた。




「嘘つけっ! 


言い寄ってくるような女に興味ないくせに。」




「嘘は言ってない。


俺が興味なくても寄ってくるんだから仕方ないじゃん。」




実際、直生は自分から動かなくても言い寄ってくる女性が山ほど居る。


…けれど、直生はただ外見だけで言い寄ってくる女性に興味はない。




「口説いてるだろ? お前は……。


ただでさえ嘘が下手なんだから、嘘つくなよ。」




「俺が口説いてるのは、なかなか堕ちない女だよ。」




颯太から嘘つき呼ばわりされた直生は、憮然とした表情を浮かべつつそう返す。


そんな二人のやり取りを黙って見ていた花音が口を挟んだ。




「何だかお友達と話している直生さんって、子どもみたいですね。」




「花音ちゃんは、子どもみたいな俺は嫌い?」




悪戯っぽく片目を瞑り、直生は花音を覗き込む。


花音の頬が面白いくらいに紅色した。




「直生さん、ズルいです。


自分の顔がいい事分かって言ってません?」




困惑した表情を浮かべ、花音はそうポツリと呟いた。




「うん、分かって言ってる。


俺の武器はこの顔と経済力だけだもん。


利用できるものは利用しなきゃさ。」




「直生さんって、自分を過少評価しすぎだと思いますけど。


顔と経済力だけで女は堕ちません。」




意外にもしっかりした声音で、花音はそう反論してきた。




「へぇ…。


じゃあ、どうして俺はモテるの?


 花音ちゃんの見解を聞かせてよ。」




直生はそう問うと、余裕の笑みを浮かべ長い脚を組んだ。

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