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第7章 ~堕ちる彼女~

「あら…、花音ちゃんに知られて困るような事あるの?」



悪戯っぽく片目を瞑り、そう聞いてくる栞に…直生は嘆息をこぼす。



「そういうんじゃないけど……、


自分の知らないところで


話のネタにされてるのは


何となくイヤだ。」



「変な事は言ってないわよ?


……直生が学年トップだったとか、


意外に一途だとか?


 基本的に女に甘いとか?」



「……っるせ。女に甘くて悪かったなっ。


訂正するなら、仕事絡んでない女に甘いんだよ、俺は。」



直生は拗ねたようにそう言うと、


仕事終わらせてくる……と言い残し、掌を振った。



「なんか機嫌悪いですね、直生さん。」



花音と一緒にいる直生はいつも穏やかで優しい。


そんな直生の一面しかしらない花音には、


不機嫌を顔に表すのは…意外な気がした。



「去年に社長職に就くの、本当はイヤだったのよ。


直生は……。


最低でも二連覇しないとレーサーは辞めるつもりがなかったから、


三十歳までには二連覇してレーサーを辞めてから


社長職に就くつもりだったみたいでね。


名前だけでも継いじゃったわけだから、


直生のサインが必要な書類も当然増えちゃうし、


会長がフォローしてくれていても直生って背負い込んじゃう性分だし……


相当ストレス溜まってるわね、あれは。」



PCを立ち上げつつ、なにかブツブツ文句を言いながら操作している直生を一瞥しながら、


栞はそう説明してくれた。

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