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第2章 ~クラッシュ~

「ったく、何でコースに侵入してくるんだよ。


警備はどうなってんだ。」




サーキット内に併設されているメディカルセンターに運ばれ、


手当てをうけたのち、直生はそうぼやいた。




「一般人じゃなく、レポーターの人だったらしい。


…まだ予選だっただけ、マシだな。


決勝だったら、多重クラッシュだ。」




冷静にそう返してきた凜に、


直生は嘆息をこぼすと、口を開く。




「まあ、十番手からなら表彰台は狙えるかな。


肋骨の罅くらいで助かった。」




「走る気か? 明日の決勝。」




「当然、走るよ。


固定してれば、一時間半くらい大丈夫だって。」




楽観的にそう言うと、


凜からは諦めの溜息が返ってきた。




「お前は、言い出すときかないからな。


無理そうなら、リタイヤしろよ。」




「リタイヤなんかするかよ。


絶対に表彰台に乗ってやる。」




「無理するなよ。


あぁ、そうだ。


さっきの侵入者、詫びに来たいと申し入れがあったんだけど、どうする? 


会うか?」




「……侵入者って、男?」




嫌そうな表情を浮かべつつ、一応確認してみる。




「いや、女の人。


しかも、レポーターだけあって結構美人さんだな。」




「会う。」




凜の返事に、


直生は掌をかえしたかのようにご機嫌に即答した。




「連絡しておくよ。


ピットに戻るぞ。


クラッシュのおかげで、メカニック全員徹夜だ。」




「そうだな、帰ろう。」




凜の嫌味を流しつつ、


直生は固定された左腹に手を乗せ立ち上がる。


そうして、ピットへと凜とともに帰ったころには、


もう陽が暮れる手前だった。

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