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第2章 ~クラッシュ~

「なぁ、その美人レポーターはいつくらいに来るわけ?」




メカニックたちが、クラッシュしてボロボロになった車を修繕している横で、


椅子に腰をかけていた直生は作業している凜に、問う。




「夕方に伺うって言ってたから、


もう来るんじゃないか?」




手を止め、直生にそう声を投げると、


凜は溜息をこぼした。




「何だよ、凜。


言いたいことがあるなら言えば?」




「大事なレース前なんだから、遊ぶなよ?」



釘をさしてきた凜に、直生は苦笑いを浮かべる。




「この怪我で、どうやって遊ぶんだよ? 


心配しなくても、レース前に手なんか出さねぇって。」



じゃあ、レース後なら手を出すのか…と、


独り心の中で呟きつつ、凜は頬を引きつらせた。




「…直生、お客様よ。」




栞が後からそう声をかけてきたので無言のまま振り向くと、


小動物のように縮こまっている女性がいた。



「あの、申し訳ありませんでしたっ。」



泣きそうな声音で、彼女はそういって勢いよく頭を下げた。



「謝られても困るし。


もう、クラッシュしちゃった後だからさ。」




嘆息をこぼしつつ、直生はそう返す。…と、


彼女は申し訳なさそうに再び口を開いた。




「はい、そうですよね。


でも、私のせいですから。


何か、償うチャンスを貰えないかと思って。」




彼女の台詞に、直生は唇の端を持ち上げた。


そうして、口を開く。




「名前は? 自己紹介してもらってないけど。」




「あ、柚月花音(ゆづき かのん)です。


スポーツニュースのレポーターをしています。」




花音はそういって、名刺を差し出してきた。




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