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第2章 ~クラッシュ~
「あぁ、そうなんだ。オートレースなんて、見たことないでしょ?」
差し出された名刺を受け取りながら、直生はそう返す。
オートレースを熟知している人間なら、サーキット内侵入などしないはずである。
「はい。」
申し訳なさそうに頷く花音を直生は眺める。
緩く巻いた肩までの栗色の髪に柔らかい素材のワンピースにジャケットを合わせたいかにも女子アナらしい格好をしている。
よくよく顔を見てみると、なるほど…凜が美人だと言ってた通り、可愛らしいというより綺麗といったほうがいいほど端正な顔立ちだった。
大きいくりっとした瞳に、通った鼻筋…。プルリとした唇。
直生は唇の端を持ち上げると、口を開く。
「申し訳ないと思ってるなら、うちの雑用係してよ。人手足りないんだ。」
二人のやり取りを眺めていた凜は嘆息をこぼす。
直生は、いわゆる遊び人だ。
もう十年ほど前になるが、直生は本命に振られてから遊び人に転身してしまった。
直生は端正な顔立ちと身のこなしを利用し、後腐れのない相手を選んで手を出すあたりが、始末が悪い。
(また、直生の病気が始まった…。)
そう胸中でこぼし、凜は口を挟んだ。
「直生、彼女だってレポーターの仕事があるんだから…。迷惑だろう。」
「分かってるよ。だから、頼んでるんだ。償うチャンスが欲しいって言ったのは、彼女なんだから。」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、直生はそう声を投げると、花音に向きなおり口を開く。
「レポーターの仕事に支障ない程度でいいから、どうかな?」
「はい。私の出番は決勝の前後だけですので、大丈夫ですよ。」
差し出された名刺を受け取りながら、直生はそう返す。
オートレースを熟知している人間なら、サーキット内侵入などしないはずである。
「はい。」
申し訳なさそうに頷く花音を直生は眺める。
緩く巻いた肩までの栗色の髪に柔らかい素材のワンピースにジャケットを合わせたいかにも女子アナらしい格好をしている。
よくよく顔を見てみると、なるほど…凜が美人だと言ってた通り、可愛らしいというより綺麗といったほうがいいほど端正な顔立ちだった。
大きいくりっとした瞳に、通った鼻筋…。プルリとした唇。
直生は唇の端を持ち上げると、口を開く。
「申し訳ないと思ってるなら、うちの雑用係してよ。人手足りないんだ。」
二人のやり取りを眺めていた凜は嘆息をこぼす。
直生は、いわゆる遊び人だ。
もう十年ほど前になるが、直生は本命に振られてから遊び人に転身してしまった。
直生は端正な顔立ちと身のこなしを利用し、後腐れのない相手を選んで手を出すあたりが、始末が悪い。
(また、直生の病気が始まった…。)
そう胸中でこぼし、凜は口を挟んだ。
「直生、彼女だってレポーターの仕事があるんだから…。迷惑だろう。」
「分かってるよ。だから、頼んでるんだ。償うチャンスが欲しいって言ったのは、彼女なんだから。」
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、直生はそう声を投げると、花音に向きなおり口を開く。
「レポーターの仕事に支障ない程度でいいから、どうかな?」
「はい。私の出番は決勝の前後だけですので、大丈夫ですよ。」