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第2章 ~クラッシュ~
「じゃあ、決まりということで。あぁ、そうだ。何かあったら電話して。」
直生はそう言って携帯電話の番号が記された名刺を差し出す。
「あ、はい。有難うございます。え…? 代表取締役って、社長さんだったんですか?」
直生の名刺に視線を落とし、花音は驚いたようにそう聞いてきた。
直生は稜賀レーシングの親会社である稜賀自動車の現社長である。
前社長の父親に名前だけでも会社を継ぐのを条件に、ドライバーを続けていいことを約束させたのだった。
実質は、二つ下の弟がトップだ。
「まぁ、一応ね。俺は三代目だし、見ての通りドライバーだから、実質は弟が仕切ってるけどね。…名ばかりの役職だよ。結構世間に知られてることなんだけど、 知らないってことは本当に素人なんだね。」
苦笑交じりに直生はそう返す。
自動車会社の跡取りがドライバーである…そういう事実がマスコミには格好のネタだったのだろう。
直生の容姿のこともあり、よく直生はオートレースの雑誌関連だけでなく女性誌の取材も受けることが多かった。
結果、跡を継いだ時もワイドショーで流れた程だ。それを知らないということは、恐らくオートレース自体に興味がないのだろう。
「すみません。何も知らなくて…。」
「謝る必要はないよ。俺も君のこと知らないし…。殆ど日本にいないから、芸能関係分かんなくなっちゃっててさ。だから、ごめんね。」
実際、日本に居たところで芸能関係に興味がないため分からないのだが…。
直生はそう言い訳をして、挨拶程度に詫びる。そうして、にっこりと笑みを浮かべ、告げた。
「さて、飯でも付き合ってもらおうかな。」
「え…? いいんですか? …だって、まだ作業中なんじゃないんですか。」
戸惑い気味にそう返してきた彼女に、直生は軽い調子で口を開く。
「いいの、いいの。ここにいても、俺は何も出来ないし。」
そうして、直生は花音を連れて、モーターホーム内の食堂へと足をむけた。
直生はそう言って携帯電話の番号が記された名刺を差し出す。
「あ、はい。有難うございます。え…? 代表取締役って、社長さんだったんですか?」
直生の名刺に視線を落とし、花音は驚いたようにそう聞いてきた。
直生は稜賀レーシングの親会社である稜賀自動車の現社長である。
前社長の父親に名前だけでも会社を継ぐのを条件に、ドライバーを続けていいことを約束させたのだった。
実質は、二つ下の弟がトップだ。
「まぁ、一応ね。俺は三代目だし、見ての通りドライバーだから、実質は弟が仕切ってるけどね。…名ばかりの役職だよ。結構世間に知られてることなんだけど、 知らないってことは本当に素人なんだね。」
苦笑交じりに直生はそう返す。
自動車会社の跡取りがドライバーである…そういう事実がマスコミには格好のネタだったのだろう。
直生の容姿のこともあり、よく直生はオートレースの雑誌関連だけでなく女性誌の取材も受けることが多かった。
結果、跡を継いだ時もワイドショーで流れた程だ。それを知らないということは、恐らくオートレース自体に興味がないのだろう。
「すみません。何も知らなくて…。」
「謝る必要はないよ。俺も君のこと知らないし…。殆ど日本にいないから、芸能関係分かんなくなっちゃっててさ。だから、ごめんね。」
実際、日本に居たところで芸能関係に興味がないため分からないのだが…。
直生はそう言い訳をして、挨拶程度に詫びる。そうして、にっこりと笑みを浮かべ、告げた。
「さて、飯でも付き合ってもらおうかな。」
「え…? いいんですか? …だって、まだ作業中なんじゃないんですか。」
戸惑い気味にそう返してきた彼女に、直生は軽い調子で口を開く。
「いいの、いいの。ここにいても、俺は何も出来ないし。」
そうして、直生は花音を連れて、モーターホーム内の食堂へと足をむけた。