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第10章 〜浮気騒動?〜

その一時間後、稜賀レーシングのモーターホームにて花音は、直生のキスシーンを栞に相談していた。



「その背格好だと、亜紀さんかなぁ? 


あの二人まだ続いてたんだ…。」



眉をひそめつつ傍らで聞いていた栞は呟くようにそうこぼす。


直生と一緒に居た身長差から考えて、恐らく百五十センチくらいの小柄なショートカットの女性。



(すごく美人だったし……)



遠めに見ても、彼女は美人だった。


小柄ながら、スタイルは良くて……。



(あんな女性に迫られたら、浮気するよね? 直生さん。)



「亜紀…さん? どんな関係なんですか? 元カノ?」



「高等部の頃の直生のクラスメイトよ。


女子陸上部のキャプテンしてた娘で、サバサバした性格の女の子。


何でも話せて楽だって言ってたのはよく覚えてるわ。


亜紀さんと付き合ってた訳じゃないみたいだけど。」



栞はそう説明しつつ、凜に声を投げた。



「凜っ、直生が帰ってきたら……連行してね。一回殺してやる。」



低くそう言ってきた栞に、凜は頬を引きつらせつつ殊勝に返す。



「分かった。……だけど、殺すのは止めてくれ。


ドライバーにいま消えられると困るから。」



「何だか、直生さんのこと分からなくなってきました。」



ぽつりと呟くように花音はそう言って瞳を伏せた。

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