テキストサイズ

~夢の底─

第2章 扉のなかの渚─。

 「そう…。辞めたって─?」「ご両親をお世話するそうです。…お家は香港です」「香港…遠いね」「─だから、思い出にとおもって…後輩ですからね」ジンジャーをユノのグラスに満たす。「優しい…な、お前─」グラスに手を伸ばし、「─で、海行ったんだ」「はい。でも泳ぐ時期じゃないし。…海の近くの展望台まで、田舎道をテクテク歩いたんです」クク…とユノが笑い出した。
「笑っちゃうでしょう? 風強くって…海の公園は閉鎖で─」「まぁ…人生、山あり谷ありだから…さ」差し出されるユノのからのポタージュ皿を、チャンミンは笑顔で受け取り、レンジの鍋を覗く。




 (眠ったかな、この時間だし…今ごろは)寝室のデジタル時計を見る。(今日1日一緒にいただけで、長い旅行─二人でしたみたいで…)濡れた髪のままのユノが入って来る。「まだ寝てなかった? 海行って、歩いたんだ、疲れたろ。夕食も作ってくれて─」並んで腰を下ろす。「寝ましょう。朝早いし、ユノは…」
 タオルで髪をゴシゴシ擦りながら、「お前は明日ゆっくり寝てろよ、朝食も用意してくれたし」「ひとりで起きられますか」頷きながら、デジタル時計に手を伸ばした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ