~夢の底─
第2章 扉のなかの渚─。
ふっと、血に似た匂いの潮の香りがした。鼓動は海の─波の音だろうか。「─チャンミ…ン寝ろよ、…お前、も─」そう云うと、言葉は途絶え寝息になる。寝息が、海を渡る風に聴こえた。身体だけ、少しずつ脇にずらす。(弟だったなら、…弟なら)潮の騒ぐ音を、甦らせ、掻き消そうとした言葉が胸のなかに、別な貌を浮き上がらす。 シーツの白い小波に、チャンミンの顔が伏せられる。
─急斜面を登る。「ここです。お疲れ様でした」車のギアを入れ、チャンミンに笑顔を向けた。「広いね…」バンガローの点在する高原が、フロントガラスの向こうにあった。「一泊二日でも荷物多いんです…早めに運んじゃいましょう」外は夕闇が迫る紫の空が、広がっていた。車から、いちばん近いバンガローに段ボールや大きなバッグを二人で、運び入れる。 バンガローのなかは簡素な造りで、中は明るい。「チャンミンさん。ぼく料理はじめちゃいます、他の荷物お願いします」バスケットから果物や缶詰を取り出しながら、ヒースが云った。
「片付けたら、僕も手伝うよ」赤のバッグから、毛布やシーツを隅のパイプ製のベッドに並べて、チャンミンは振り向くとヒースに笑いかけた。
─急斜面を登る。「ここです。お疲れ様でした」車のギアを入れ、チャンミンに笑顔を向けた。「広いね…」バンガローの点在する高原が、フロントガラスの向こうにあった。「一泊二日でも荷物多いんです…早めに運んじゃいましょう」外は夕闇が迫る紫の空が、広がっていた。車から、いちばん近いバンガローに段ボールや大きなバッグを二人で、運び入れる。 バンガローのなかは簡素な造りで、中は明るい。「チャンミンさん。ぼく料理はじめちゃいます、他の荷物お願いします」バスケットから果物や缶詰を取り出しながら、ヒースが云った。
「片付けたら、僕も手伝うよ」赤のバッグから、毛布やシーツを隅のパイプ製のベッドに並べて、チャンミンは振り向くとヒースに笑いかけた。