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~夢の底─

第2章 扉のなかの渚─。

 「はい、こっちもお願いします…でも、それほど手の込んだものじゃないです」ペディナイフで、玉ねぎの皮を剥きながら首を竦める。「あ─アッという間に─暗くなったね…」低い天井近くの小さな四角の窓から、微かに星がひとつだけ瞬く。
 ホールトマトの缶を開け、ボウル代わりの小鍋に半分入れた。「チャンミンさん」フライパンで米を炒めているヒースが、「味つけ…辛めにします?」「パエリアだよね。そうして」小鍋にバジルを混ぜ、オイルサーディンも入れ、からめながら答えた。「チャンミンさんの美味しそう─良い色…」スパイスを片手にチャンミンの鍋の中を見て、嬉しそうな顔になった。「こっちのスープは、シンプルな味つけにしとくよ」「シンプルな味…ぼくのはユニークなお味だったりして?」フライがえしを器用に動かした。チャンミンは笑って、鮮やかな色合いのサラダを二人分の皿に盛った。


 ─目の前に引っ掻きキズが出来た。「見えました?」「あ…彗星─?」…ふとヒースがため息を洩らす。「あ、…寒い?」 かぶりを振る。バンガローから離れてある、キャンプ地のバーベキューの場所だった。

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