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~夢の底─

第2章 扉のなかの渚─。

 「座れそうだよ」コンクリートのブロックをいくつかと、転がっていたタイヤをチャンミンが地面に並べる。「これちょうど良かった。敷いちゃいましょう」ブルゾンの大きめのポケットから、タオルとテーブルマットを出す。敷いたものに座りながら、「汚れなくてすむね。バーベキューのところだから、黒っぽい」両手をはたいた。 
「さっき洗おうと思ってたんです。だから汚れてもいいですよ」─真夏の跡地を思わすバーベキュー場は、黒い地面に石と窪みがある。月の表面のようにも見える。  
 「星みるなんて久しぶり」「夜も起きてるけど…空あんまり見ない─」薄い雲がかかっていたらしい天の一角が、明るく見え出す。「生きてるうちに─宇宙旅行、行ってみたいですね…」「うん。実現するようで難しい─感じかな」「そうですよね? 火星にも誰も行ってない」─人工衛星が直線の軌跡を描いて行く。 「宇宙旅行したら、宇宙人と会う─?」「宇宙人ね…地球人類を無視してる気もするね」「あと…、よく宇宙飛行士が帰ってから、神様信じちゃったり…」「地球の外は、異空間過ぎるんだろうか。…わかんないな」虫の鳴き声も、近い森からの夜鳥の羽ばたく気配も無い。夜の空気は気温を下げた。

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