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~夢の底─

第3章 ─秋が、燃える。

黄金色の前髪をはね除けるように、顔を上げ「ユノ」─笑みを見せる。「座って、いいか?」一瞬とまどい顔をしたが、「どうぞ。ユノの席ですから」脇に、そう云いながら、身体をずらす。赤のチェック柄のシャツが、金髪に映える。「チーフは?」「まだ時間あるから…」云って手元のリーフレットを、また読みはじめた。
 「チャンミン」「はい」顔もあげない。「お前、キャンプ行ったって」「ア、ハイ…?」まっすぐな瞳をユノに当てた。「イトゥクから聞いて─、そうなのか」「はい」まじまじと顔を見つめられ、ユノが口籠る。「……そう? この前、海行った子─?」「そうです」 突き放すようにも聞こえる程、チャンミンの返事は素っ気ない。
 「あ。そう…? 泊まり…キャンプって」「泊まりでした」「…そう、二人─で…」「はい。バンガローでしたけどね」「あ、どこの? ─」「江原道ですよ」「江原道か、知らなかったな」「そうでしたか?」「で、香港だったよね? やめた子。─帰った?」「いいえ、今、僕のマンションにいます」─スチールのドアがいきなり開き「5分後だ、ミーティング」怒鳴る声と一緒にポスターやカタログの束が、会議用の大テーブルに投げつけられた。

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