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~夢の底─

第6章 惜春譜

 笑顔でチャンミンは、深く頷く。「─はい。ユノ、大きい猫…ううん、虎みたいでしたね。寝姿」「ア─? そ…うだった。かな? ……」ククッと、チャンミンは含み笑いする。「こう…でしたね。ユノの格好は─」両手を前へ伸ばし、ベッドにうつ伏す。「足はね、え…。たしか、こう─だったよう…な」脇に両脚を揃えて、床の上に投げ出してみせた。
「チャン…ミン」笑いが混ざった声で、「よく…覚えてるね。ま─お前も、…寝よう?」
 まだ、笑いの残る顔のチャンミンは、立ち上がり「久しぶりに、ユノは寝室で休めますね」「俺の部屋じゃ、看られないよな…」「ユノのベッドはあるけど、足場悪くて、…無理ですね」「足場、あ。足の踏み場、ね。─うん。部屋のなか、片さないからね」顎を毛布に埋める。
「チャンミンは、今夜も─?」「はい。ゲストルーム、パーティション無くしたからリビングで、僕、寝ます」「明日の晩からは…」「帰りますよ、自分のマンション」
ため息をユノが吐いた。寝息に似たため息だった。
「ゆっくりひとりで、ユノ…よく眠ってください」チャンミンの穏やかな声にも、無言のユノ─チャンミンが形の良い指先で、間接ライトを1灯ごと落としていく。

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