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~夢の底─

第6章 惜春譜

 「お前が可愛がってたあの子─残念だ」不意に思い出したのか、チャンミンに向きなおり云う。「あの…子」「リーダー役で、…後輩ら、よくまとめて、面倒もみてた…」「レラ兄さん、知って─」唇のはたをキュッとさせて微笑う。「うん、…おれも良い後輩と思ってた」微笑みながら「お前もそう思ったろ?」「─彼、…帰りました」「香港か─。来週おれ行くよ」「撮影…ですか、─僕も…」 
 濁した言葉に、レラが怪訝な顔で「どうした。はっきり云えよ、仕事だ。おれはな」……黙ってしまうと、「ユノのこと。あの後輩の子の話…。レラお兄様にはぜ~んぶお見通し、よ」チャンミンの戸惑った顔を覗き込み、「ま─。今は勘弁してやる。…こんど話せ?」まだ迷い顔のチャンミンをよそに陽気に声をあげて、笑った。屈託無く楽しく笑う声が、廊下に響く…。
 「兄さん…。僕が─」云い淀むチャンミンに軽く手を振ると、「いいって…、チャンミン。自分の面倒は、自力でやってくれ…話はどんなことでも聞くから─よ」 
 大きく曲がる廊下の先に、レラに「兄さん」とくちぐちに呼びかけ、両手を挙げて急がすリョウク、シウォンやドンヘの姿が見える。

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