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~夢の底─

第7章 晩夏風──

「…狭いアパートだけど。養父もまたすぐに、ケアホームに戻るし」「そうなると大変だろうけど、お大事に─ね…」二人の後ろからの唄う声は、細くなる。「ご心配いただいて、有難う…ございます」頭をそう云いながら、下げた。「さっきの、話の─戻すけど」「はい。──」「こんな大変な暮らしのきみに、…ユノの云うとおりだ、良い思い出も─何も残してあげられなかった」「謝りに、来てくれた…」「当たり前だよ」視線を落とした。「チャンミンさんがはじめて」「え…」「…はじめてです。チャンミンさんみたいな人は─」冷ややかな程、涼しい清々しい微かな風が、地面の下から、舞い起こったようだった。
 「チャンミンさんはぼくには、不思議な人です」爽やかに匂う風のような微笑が、チャンミンの瞳に向けられた。「いろんなこと、話したし」自分にかまう暇も無い毎日なのだろう。白っぽくささくれた唇で、少しだけ、微笑った。「うん…。大事なことも─僕に打ち明けてくれた…のにね…」「それも、チャンミンさんだったから…話せた」チャンミンは下を向いてしまった。

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