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~夢の底─

第7章 晩夏風──

「チャンミンさんに…そんなに気にかけてもらって─才能なくって練習生さえ…諦めたぼくなのに─」「…事情あって、続けられなかったんだから、それは違うよ」「続けられることが、才能でしょう?」高い位置で留めた、髪の毛先が揺れ動き、「チャンミンさん。ぼくも自分のこと正直に云いますね。…メモ渡したのは賭だったんです」
ミニバイクが公園の際の道を走りゆく─荷台の銀のホルダーが、チリンチリンと風鈴そっくりに音を鳴らした。
「ずっと…。─片思いが気楽と思っていました。だけど…、やっぱりずるいし、気の小さな考えですよね」フフッと息をつくように、笑った。「それにチャンミンさんなら、甘えさせてくれそうで─それで…どういう風になるのか、好奇心もあって、メモ渡したんです」向き直って、真正面からチャンミンの顔を見て「軽はずみでした。子供っぽくて…いたずらみたいな真似…。結局…は─、チャンミンさん、ユノ先輩にも…おふたりにご迷惑…かけただけ…でしたよね…? ぼく、お詫びします」何か云いかけたチャンミンに「あの夜で最後…もう会うこともないって思ってました。だから、…来てくれて、やっぱりチャンミンさんだなって思う─」少年のように、笑った。

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