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ドSな御主人様

第1章 出会い

「大丈夫か?」



スーツ男はくるりと振り返ると屈んで私の顔を覗きこんだ。



「だ、大丈夫です…」

「そうか。…これ着てろ」



スーツ男はジャケットを脱ぎ、私の肩にそっとかけてくれた。


…よくよく見れば私すごい格好。あいつらにやられたと思うと凄く不快。




「ありがとうございます」

「あぁ。家まで送る。心配してんだろ、親御さん」



スーツ男に立たせてもらい、私は近くに止めていた車に目をやった。



黒塗りの車…。詳しくわ分からないけど、あれは海外の高級車に違いない。



「心配なんて…。私、親居ないので」



心配するだなんて出来ないよ。もう居ないし。


けど、親が居ない分私は頑張った。バイトを掛け持ちして、必死に働いた。

寝る暇もないくらい、勉強する暇もないくらい頑張って、頑張って…。

なのに、なんで私がこんな目にあわなきゃならないの?必死に頑張ってるのに…



そう思ったら急に涙が溢れてきた。




「…そうか。そりゃ悪かった。っておいおい、泣くなよ」

「な、泣いてなんか…ひっ、泣いてなんかぁらいだからぁああ!」

「…チッ、しゃーねーな」



スーツ男は泣きじゃくる私に近づき、優しくギュッと抱きしめてくれた。



いい匂いがする。香水かな。とっても安心する匂いだ…。


気づけば私は意識を手放していた。



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