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IF……餃子を食べたら?

第5章 棗さんに餃子を食べさせてみた

愛「ふぅ。なんとか間に合った…」

時刻は午後9時を過ぎたところ。

(これから帰るってメールが来たから、もうそろそろだよね……)

ガチャ

(帰ってきた!)

ネクタイを緩めながら棗さんがリビングのドアを開ける。

愛「おかえりなさい」
新「あぁ…」

ソファーへ深く腰を下ろした棗さんは
『ふぅ』と一息ついた。

(やっぱり棗さん、疲れてるんだ…)

愛「ご飯、食べれますか?お風呂も沸いてますけど…」
新「お前もまだ食べてないんだろう?」
愛「はい…」
新「…ならば、先に食事だろう…」

ふわっと抱き寄せられる。
棗さんの小さな気遣いが私に幸せを運んでくれる。

愛「はい、今用意します。棗さんは座っててください」
新「あぁ」

ダイニングへ移動してきた棗さんが食卓に目を落とす。

新「白和えにごぼうの炊き合わせ、つみれ汁と……餃子?」

ドキッ

(やっぱりきた!)

新「…俺が匂いの強いものは口にしないという事を、お前は知っているだろう?」
愛「は、はい。でも無臭になるように工夫してみたんです。そしたら棗さんにも食べてもらえるかなーっと思って…」
新「勉強してたのか…?」
愛「…はい…まぁ…その、一応…」

(まさか、夏目さんにもらったなんて言えない!)

新「ふっ、じゃあ、いただくとするか…」
愛「はい…いただきます」

棗さんはつみれ汁を一口、次にお米を口にする。

(食事の順序もきちっとしてるよね…)

新「この白和えは…ゴマがよく効いてるな」
愛「はい、棗さん忙しくて食事もちゃんと取れないと聞いていたので、栄養価の高いものを少しでも取り入れた方がいいかなって思って、少し多く入れてみました」
新「ごぼうの炊き合わせか……ちゃんと中まで味が染みわたっているし、歯ごたえも丁度いい」
愛「本当ですか?…あ、本当だ、美味しい」
新「で…これがお前の自信作の餃子か…」

パクッ

愛「いかがですか?」
新「うむ…匂いも気にならないし、味もいい。会社やミッションもあるというのに、俺の為勉強してたのか?……お前はいい妻になりそうだな…」
愛「!!!」

(い、今、棗さんの口から妻って…)

新「……」

顔が一気に熱を帯びる。
一方、棗さんは自身の口から出てきた言葉に絶句している。
しかし、
次の瞬間メガネが光ったのを私は見逃さなかった。

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