
青い桜は何を願う
第3章 青い花の記憶
「リーシェ様の魂を継いだ女の子には、王家のしるしが身体のどこかに現れるんだって」
「何、が、言いたいの……?」
「聖花隊は、青い花の痣を持つ女の子を、血眼になって探してる」
「んなこと、分かってる!」
「このはがカモフラージュになっているから、本物のリーシェ様の居場所を今、やつらは嗅ぎつけられない。リーシェ様に危険が及ぶまでに、第二創世会を潰さないと、やつらのパトロン、政界の王者、銀月善満頭を何とかしないと、あの方が……柱にされる。取り返しがつかなくなる。それが出来るのは、このはと私だけなんだよ」
だから、この世界からも莢からも、自分自身からも逃げられない。
このはは、わざわざ莢に現実を突きつけられるまでもなかった。
世界には危険が蔓延っている。そんな中、リーシェの魂を残してどこかへ行ってしまえるはずがない。
さくらを見捨ててしまえるはずがない。
このはという偽の王女を、聖花隊が見抜くのだって、きっと時間の問題だ。今している努力でさえ、時間稼ぎに過ぎない。
「生まれ変わりたい。私も、このはみたいに」
「ゃっ……」
このはが莢に借りていた、ベビードールの身頃を開かれた。
下着姿にさせられて、視界がいよいよ涙で歪む。
胸の谷間にキスされて、乱暴に胸を掴まれる。
「あぁぅっ」
「このはを愛したら、私も、カイル・クラウスじゃなくて、現代(ここ)での自分になれるかな。このはみたいに、生き生きした目で、この世界を見られるかな」
「そんなのっ、……んっ、知らないっ」
「このはの肌、温かい。私のためにもっと鳴いてよ」
執拗に素肌をいじられながら、相手が莢だと分かっているのに、おかしくなる。憎らしくて悔しくて狂いそうなのに、身体が勝手にとろけるような期待を覚える。
慣れた手つきで下着を矧がれた。指先で胸の先端を弄ばれる。
このはは、自分の身体に隠すべきものがあるのも失念していた。
莢に何人もの女子達が騙されてきたのにも、納得がいく。
「このは」
少し掠れた低めの声は、カイル・クラウスのそれよりずっと綺麗だ。
