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青い桜は何を願う

第4章 私達にリングはいらない


* * * * * * *

 屋上に出ると、心地良い風が吹いてきた。

 さくらは校舎の突起の壁にもたれて、腰を下ろす。

 世界が綺麗で、空気が美味しい。

 さくらは、このはを想うと、綺麗な綺麗な場所にとけていってしまえる気がした。

「お待、たせ……」

 息も切れ切れのソプラノが、後方から聞こえてきた。

「このは先輩っ」

 さくらが振り向くと、そこに、大好きな上級生の姿があった。

「やっと……着いた……」

「おはようございます、このは先輩。えっと……お疲れ様ですわ」

 さくらは、そこでこのはの出で立ちに違和感を覚えた。

 普段のナチュラルガーリーとは違う、どことなく少年っぽいゴシックパンクの装いだ。

 黒いシャボのあしらってある白いシャツにネイビーのタータンチェックのベスト、黒と紫のストライプのアシンメトリーの巻きスカート付きハーフパンツのフリルは、あえてダメージ加工が施されていた。黒い茨がプリントされたハイソックスと、黒いショートブーツが合っている。

 このはの好みとはまるで違うが、垢抜けていた。

「やっぱり変?この格好」

「あっ、いえっ、変なはずありません!」

 さくらはすかさず否定した。

「き、綺麗で……その、このは先輩って……、そういうお洋服もお似合いで、かっ、格好良くて……ついじっと見てしまいましたの。……今日は、まるで騎士様みたい」

 世辞でもなければ大袈裟でもない。

 さくらの胸が、ざわめいていた。

「……っ。さくらちゃん、それ……。あ、う、ううん、ありがと」

 一瞬、このはの表情に、複雑な色がちらついた。

 さくらの隣にこのはが腰を下ろしてきた。だが、金髪の影の中に見える顔は、やはり何か考え込んでいる風だ。

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