
青い桜は何を願う
第4章 私達にリングはいらない
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屋上に出ると、心地良い風が吹いてきた。
さくらは校舎の突起の壁にもたれて、腰を下ろす。
世界が綺麗で、空気が美味しい。
さくらは、このはを想うと、綺麗な綺麗な場所にとけていってしまえる気がした。
「お待、たせ……」
息も切れ切れのソプラノが、後方から聞こえてきた。
「このは先輩っ」
さくらが振り向くと、そこに、大好きな上級生の姿があった。
「やっと……着いた……」
「おはようございます、このは先輩。えっと……お疲れ様ですわ」
さくらは、そこでこのはの出で立ちに違和感を覚えた。
普段のナチュラルガーリーとは違う、どことなく少年っぽいゴシックパンクの装いだ。
黒いシャボのあしらってある白いシャツにネイビーのタータンチェックのベスト、黒と紫のストライプのアシンメトリーの巻きスカート付きハーフパンツのフリルは、あえてダメージ加工が施されていた。黒い茨がプリントされたハイソックスと、黒いショートブーツが合っている。
このはの好みとはまるで違うが、垢抜けていた。
「やっぱり変?この格好」
「あっ、いえっ、変なはずありません!」
さくらはすかさず否定した。
「き、綺麗で……その、このは先輩って……、そういうお洋服もお似合いで、かっ、格好良くて……ついじっと見てしまいましたの。……今日は、まるで騎士様みたい」
世辞でもなければ大袈裟でもない。
さくらの胸が、ざわめいていた。
「……っ。さくらちゃん、それ……。あ、う、ううん、ありがと」
一瞬、このはの表情に、複雑な色がちらついた。
さくらの隣にこのはが腰を下ろしてきた。だが、金髪の影の中に見える顔は、やはり何か考え込んでいる風だ。
