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青い桜は何を願う

第6章 心はいびつにすれ違う


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 いずれ華天(はなぞら)と呼ばれる帝国は、一握りの人間にのみ認知された領域で、建国準備が進められている。ここは地球の内側だ。

 新興宗教第二創世会の始祖、一条一樹とその弟次成は、いずれ華天帝国と呼ばれるところの都心の屋敷で生活していた。

 ただしここは、兄弟のパトロン、銀月義満の所有地だ。
 兄弟は義満と利害関係が一致しており、彼と良好な関係を築き上げてきた。この屋敷も、義満の資金が建てたものである。

 早は、屋敷の、次成の書斎を訪ねていた。

「ほう。では、彼女は氷桜の蜜を飲ませても大事には至らなかったと?」

「さようっス、兄貴。俺らは初っ端、弦祇このはが聖女じゃねぇかと睨んでたんスよ。が、そいつぁ、一筋縄じゃいかねぇヤローっした。スから俺は、やつの女を人質にして脅してやろうっつー渋いアイデアを思いついたんス」

「硬派な貴方をそこまでの作戦に追いつめたお嬢さんも、なかなか興味深いものですね。それで真淵君、氷桜の匂いまである弦祇さんではなく、彼女とお付き合いされている方が「花の聖女」であると、貴方は結論したわけですね。氷桜に対する抵抗力の他に根拠は?」

「完璧なんスよ。美咲さくらは、一樹兄貴に見せてもらった本に書いてあった通りのもんを、持ってたんっス」
 
「美咲さくら……」

「弦祇より一年下のガキなんスが、俺は昨日やつに盛った氷桜が効いてきやがるタイミングを見計らって、放課後、後をつけたんス」

「倒れたところを捕まえる。そして弦祇さんを呼び出す算段だったのですね」

「うぃっす。ところがその人質が、聖女のしるしを持ちやがってたんスよ兄貴!痣も腕に確認済みっス。そして俺らは作戦を変えて、美咲に接近しやした」

「それで?」

「へい!弦祇の香水臭ェ匂いより、何つーかこう、美咲のヤローから、頭も痺れる不思議な匂いがしやした。内田のヤローなんぞはもぬけの殻にでもなりやがるかと危惧した次第で──」

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