二面性*マクガフィン
第3章 学年1位のエリート
「…………………」
目の前にいる人物が微笑む。
それを見つめ続けている翔。
完全に女のペースに飲まれていた。
「……………フッ…」
だから… 仕掛けてみた。
翔は手を伸ばし、女の頬に触れると、
スーッ…と顎へと手を持っていき…
クイッ… と、顎を軽く持ち上げた。
「こうでもしないと…教えてくれないの?」
翔の顔と女の顔が、先程よりも近くなる。
緊張感の漂いと無声の時間の中での駆け引き。
プラス、極度の接近戦。
女を見つめる翔。翔を見つめる女。
翔のまっすぐな瞳を見ると…。
「………ハァ…」
瞬きして、
「………!?」
自分も翔の頬に片手を伸ばした。
驚きの行動だった。
「別に…私を好きにしても構わないのよ……?」
そうして、見つめ合う時間が長くなる2人。
空気に飲まれ、段々と時の流れが遅くなることさえ感じなくなる。
「…………でも」
女は手の力を抜き、下ろした。
「少しくらいなら…教えてあげてもいいわよ…」
「…………………」
翔は真央の言葉を耳に通しても、
無言で見つめ続ける。
「あ、でも…」
何か思い出したように、気付いたように、ハッ…!となる。でもそれはすぐになくなったようだ。
「また今度…話すわ……」