二面性*マクガフィン
第3章 学年1位のエリート
「!?」
ついに動揺が顔に出てしまった。
「邪魔……だと!?」
すると女の表情は、なぜか満面の笑みへと変わった。
まるで、小さな子供のような表情へと。
そして、翔の胸のほうへと手を伸ばした。
何をするのか…目で追っていく。
女は音も立てずに彼の胸ポケットから万年筆を取った。
翔は何が何だか分からなかった。
手に取った万年筆を翔に見せつけると、面白おかしくなったかのように微笑んだ。
そして…
「二宮和也」
馴染みの単語、いや、名前が女の口から出た。
「え…?ニノ?」
さらに訳が分からなくなる。なぜ彼の名が出てくるのか…さっぱりだ。
その万年筆は翔のものでも、おそらくニノのものでもない。
考えようとする翔を目の前に、女は微笑み続けながら滑らかに口を動かす。
「まさか…櫻井翔に秘密で、盗聴器なんていう物騒なものを仕掛けるなんて…」
翔は、単語に反応した。
「フフ…まるで探偵みたいね」
手の中の万年筆を遊ぶように持ち方を変えていった。
「盗聴器…」
彼はやっと状況を理解したようだ。
今度は自分に仕掛けられていたという万年筆をジッと見つめた。
今までこんなこと1度もなかったからこそ…驚きが隠せなかった。いや、もしかしたら今までもそんなことをされていたのか……。