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土砂降り

第10章 10

「その顔可愛い。
尚也の事は知ってたよ。一年の今頃かな?尚也が傘くれたじゃん。尚也は俺の顔も見てなかっただろうけど。」

傘?そういえば去年の梅雨に傘をあげた気がする。

赤岩は僕の瞼に優しくキスをするとギュッと抱きしめてベッドに寝転がる。

「俺はあの日、傘持ってたんだよ。
ちゃんとロッカーに入れてたんだ。でもなくなってた。
あの頃よくあったんだよね。モテないやつにひがまれて喧嘩売られたり嫌がらせされたり。
んで、傘盗まれてさ。そしたら尚也が傘をくれたんだよ。高田に傘入れてもらうからこれ使えばって。」

健人と一緒に帰るから健人に傘入れてもらったんだっけ。でもあれが赤岩だったなんて全然覚えてない。

「尚也は俺のクラスでも有名だったよ?話しかければ笑って答えるのに、心を開いてくれることはない。ずっと本を読んでて自分からは誰にも興味を示さない、近寄りがたい王子様って。女子が騒いでたからね。」

近寄りがたい王子様ってどうなんだろう。

「お礼が言いたかったんだ。放課後尚也の後を追って図書館に通ってることを知ったよ。
でも声はかけなかった。
だって尚也は僕の事なんて気がついてなかったからね。」

「赤岩は僕の事、ずっと知ってたんだ?あの時傘をあげたのか赤岩だったなんて、僕、気がつかなかった」

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