テキストサイズ

土砂降り

第16章 16

「お疲れっす!
尚也くんって帝太くんと、知り合いだったんですか?って学年一緒ですもんね。」

今までの僕達の会話を聞いていなかったのか、千葉くんが心なしかいつもより体育会系なノリで話しかけてくる。

「えっ、千葉くんこそ、赤岩と?」

動揺を抑えつつも会話を続ける。

「そりゃぁ同じ水泳部ですから。帝太くんは部の奴らと来たんですよね?逸れたんすか?」

「いや。知り合い見つけたからって先に行ってもらった。」

赤岩の手は一瞬ギリっと力が込められた後、僕から離れる。

「千葉こそ、部の奴らを断って彼女と来てるって皆が噂してたけど?」

「いや、彼女とかいないですから。尚也くんと来てるんですよ。ていうか、尚也くん。逸れるなって言ったそばから逸れないでくださいよ。探すの大変なんですから。」

掴まれて赤くなった腕を咄嗟に隠した。
その行動が気に入らなかったのか赤岩にまた腕を引っ張られる。

「尚也。話は終わってない。と言うか全然質問に答えてないだろ。」

逃がさないと言う様に肩をぐっと掴まれて顔を覗き込まれる。

「目を逸らすなよ。どうして逃げる?」

「ちょっ、帝太くん?」

浴衣が暑い。

「ちゃんと見ろよ。尚也のしてる事は見たくないものから目を逸らして、逃げて、別のもので紛らわせてるだけだろ!」

トウモロコシ食べたかったなぁ。

「逃げないで話せよ!尚也!」

「帝太くんっ!」

千葉くんが赤岩に向かって大声を出した所までしか記憶にない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ