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はな*つむ

第2章 闇烏

 立海は微笑んで見せる。

「退魔師の中には、功績を競って役目を一人でこなそうとなさる方もいますが、それは実に合理的では無いと思っております……それに、氷雨殿はまだまだ学ぶ事もあるでしょう、ぜひ見て行って下さいませ」

 優しく言われ、氷雨は頷く。

「では、お言葉に甘えて……」

 歩き出した立海に続き、氷雨も歩き出す。
紅蓮は苦々しい表情を見せたが、何も言わずについて行った。




 その室内はひどい有り様であった。

 まだ生々しい赤黒い物が床や壁に着いていて、体をふたつに裂かれた男の亡骸が転がっている。

 体の一部は不自然に欠けていて痛々しい。

 更には床の一部に濁った液体が零れていた。

「退魔師様……」

 中を覗いていた男が一人、立海に気付いて声をかける。

「ひどい、なんと痛ましい事だろう」

 立海は悲し気に目をふせた。

「この男には妻がいたハズなのですが、見当たりません」

 それを聞き、立海は顔を上げる。

「そうですか、無事に逃れたのかも知れません……後は我々にお任せください」

 人々を安心させるため、優しい口調で立海は伝えた。
 集まっていた人々は素直にその場から去っていく。


 残った立海の表情は暗い。

「立海殿」

 心配に思った氷雨が声を掛けると、立海は弱々しく微笑んだ。

「おそらく、妻の女性は闇烏に拐われたのでしょう、種付けをされて……」

 言葉を聞いた氷雨は身を震わせる。

「闇烏の巣を探し、退治致します」

 立海が強い口調で言い、砕は頷いた。

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