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はな*つむ

第2章 闇烏

 氷雨は声を掛けてくる一人一人に挨拶を返しながら歩いていた。

 そんな中、氷雨の目に二人の人物が捉えられる。

 一人は退魔師特有の衣に身を包んだ若い男。
氷雨よりは歳上であろうが、ほぼ同じ年頃だろう。
 黒い髪をひとつに結んでいて、目の色は深い青色をしている。

 もう一人は緑色の長い髪を結びもせずに遊ばせている男。
綺麗な顔立ちで、大人の雰囲気をまとっている。
彼は橙色の瞳をしていて、頭には不思議な形をした角が二本見えていた。

 彼らを氷雨と紅蓮は知っている。

 退魔師の立海(たつみ)とその補佐を任されている砕(さい)だ。

「あの二人、どうしたのだろう」

 氷雨は気になり、二人が立つ場所に近付く。

 すると、二人が見つめている横道に、人が集まっているのが見えた。

(人が集まっている? 何かあったの?)

 氷雨は立海の近くに早足で向かう。
気付いた立海は氷雨を見て小さくお辞儀をした。

「氷雨殿」

「どうも立海殿、これは何が有ったのです?」

 問い掛けた氷雨を砕が睨む。
すかさず紅蓮が砕と氷雨の間に入り「申し訳無い」と言って頭を下げた。

「闇烏の仕業です……民が見付けて、私に伝えてくださりました」

 立海は嫌な顔もせずに答える。
 氷雨は人が集まっている場所に視線を向けた。

 長屋の一室を覗いているらしい。

「一緒に参りましょう」

 立海は氷雨を誘う。

「よろしいのですか? これは立海殿の役目では?」

 話を聞きはしたが、まさか一緒に来るように誘われるとは思っていなかった。
 氷雨は戸惑う。

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