はな*つむ
第2章 闇烏
何も言えぬまま、紅蓮は自身の無力さに震えた。
任務実行のため、氷雨と紅蓮は都の外へ向かう門の前に来た。
そこにはもう一人の退魔師がいて、氷雨を見るなりにやりと笑う。
短く、雑に切られた灰色の髪に赤い瞳。
肉食の獣を連想させる鋭い目付きに高い身長。
氷雨は少しだけ身構える。
「怖がらないでください、噛み付きはしませんよ」
退魔師の後ろから顔を出したのは驚くほど綺麗な顔をした人だった。
藍色の短い髪に緑色の瞳をしている。
肌は白く、華奢ではあるが、纏っている着物から男性らしい事が判る。
頭には左側に一本だけ角が見えていた。
「彼は退魔師の神威(かむい)、ボクは補佐の泉(いずみ)です、新人の氷雨様をお守りします」
泉は男性にしては綺麗な声で、明るく弾むように言う。
氷雨は頭を下げた。
「氷雨と紅蓮です、よろしくお願いいたします!」
頭を下げて挨拶をした氷雨に続き、紅蓮も頭を下げる。
「ああ、早えートコ闇烏の巣に向かうぞ、日が沈んだら奴らは厄介だ」
神威はそう言うとさっさと歩き出す。
泉は笑って「では行きましょう」と氷雨の手を優しく引いた。
その優しい温もりに、氷雨は驚く。
氷雨の反応を見ていた紅蓮は形容しがたい複雑な感情を抱いていた。
山に入り、歩く事二時間。
崖の中腹にその場所はあった。
闇烏が作った横穴。
恐らくその中に敵は潜んでいるだろう。
崖の上から見下ろしながら神威は笑った。
任務実行のため、氷雨と紅蓮は都の外へ向かう門の前に来た。
そこにはもう一人の退魔師がいて、氷雨を見るなりにやりと笑う。
短く、雑に切られた灰色の髪に赤い瞳。
肉食の獣を連想させる鋭い目付きに高い身長。
氷雨は少しだけ身構える。
「怖がらないでください、噛み付きはしませんよ」
退魔師の後ろから顔を出したのは驚くほど綺麗な顔をした人だった。
藍色の短い髪に緑色の瞳をしている。
肌は白く、華奢ではあるが、纏っている着物から男性らしい事が判る。
頭には左側に一本だけ角が見えていた。
「彼は退魔師の神威(かむい)、ボクは補佐の泉(いずみ)です、新人の氷雨様をお守りします」
泉は男性にしては綺麗な声で、明るく弾むように言う。
氷雨は頭を下げた。
「氷雨と紅蓮です、よろしくお願いいたします!」
頭を下げて挨拶をした氷雨に続き、紅蓮も頭を下げる。
「ああ、早えートコ闇烏の巣に向かうぞ、日が沈んだら奴らは厄介だ」
神威はそう言うとさっさと歩き出す。
泉は笑って「では行きましょう」と氷雨の手を優しく引いた。
その優しい温もりに、氷雨は驚く。
氷雨の反応を見ていた紅蓮は形容しがたい複雑な感情を抱いていた。
山に入り、歩く事二時間。
崖の中腹にその場所はあった。
闇烏が作った横穴。
恐らくその中に敵は潜んでいるだろう。
崖の上から見下ろしながら神威は笑った。