テキストサイズ

はな*つむ

第2章 闇烏

 そして泉に一枚の札を渡す。

「泉、頼むぜ、あと紅蓮はここで泉を守れ」

「は!? 何故オレが!?」

 急に勝手な指示を出され、紅蓮が怒鳴る。

「申し訳ありません、紅蓮殿、神威様達が闇烏を討伐する間、他の妖怪が入れぬ様、また闇烏が逃げ出せぬ様に巣の出入り口に結界を張らねばなりません……しかし、結界を使用中ボクはとても無防備になりますので、どうかお守り頂きたいのです」

 丁寧に説明し、泉は深々と頭を下げた。

 紅蓮は言葉に詰まる。

「紅蓮、お願いします」

 氷雨も真っ直ぐに紅蓮を見つめて言ってきた。
こうなれば無下に出来るハズも無い。

「……神威殿、氷雨様をよろしくお願いいたします」

 無理に落ち着けた口調で紅蓮は言った。
神威は笑ってひょいと氷雨を抱き上げる。

「え!?」

 突然の事に氷雨は声を上げた。
 浮いた体は神威の体に引き寄せられ、しっかりと密着する。
華奢な氷雨を抱きながら、神威は崖を軽い動きで降り始めた。

 流石に紅蓮も驚く。
 紅蓮が慌てて崖下を覗き込むと、既に二人は穴の入り口についていた。

「天狗みたいな方でしょう?」

 目を丸くしていた紅蓮に、泉が笑いながら言う。

「……そう、ですね」

 ……としか返せなかった。




 横穴に入ってみると、中は思いの外広いことが分かる。
 氷雨と神威は警戒しながら中へと進む。


 奥に向かってみると、次第に暗さを増していく。
 神威は片手の甲に指で何かを書く。
手に書いた物にふっと息を吹き掛けると空中に小さな火の玉が現れた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ