はな*つむ
第2章 闇烏
悩む氷雨を連れて歩く神威の足が止まった。
氷雨も止まり、ハッとする。
(いけない、お役目の途中だ、しっかりしないと)
ブンブンと首を振って氷雨は頭を切り替えた。
神威は空中に灯した火を手の中にそっと包む。
術で生み出された火は、術を使った本人だけ全く熱くないのだ。
神威は姿勢を低くして音を立てない様にゆっくりと進み始める。
見よう見まねで氷雨も続く。
奥から女の声が聞こえて来た。
叫びにも似た声で、洞窟内によく響いている。
近づくにつれてハッキリしてきた声と、卑猥な音。
氷雨は息をのむ。
「やれやれ、この季節はこの時間から元気だな」
静かな声で面倒臭そうに神威が呟いた。
「さて、実力を見せろよお姫様」
馬鹿にしたような風に神威は言って氷雨を見た。
氷雨はムッとして神威を睨む。
神威は鼻で笑って氷雨を自分の前に来させた。
「行って来い、ダメそうなら助けてやる」
それだけ告げて神威が氷雨の背中を強く押す。
まだ心の準備も出来ていないのに、押された体は体勢を崩しながら妖怪のいる空間へと投げ出された。
「わぁっ」
何とか転ぶ事は回避出来た。
慌てて体勢を直して、氷雨は妖怪の方を睨む。
見た瞬間、氷雨の身体に震えが走った。
洞窟の中でも何処からか光が入っているらしくその場所は明るい。
その淡い明るさの中で、氷雨の倍はある大きな黒い妖怪が立っていた。
氷雨も止まり、ハッとする。
(いけない、お役目の途中だ、しっかりしないと)
ブンブンと首を振って氷雨は頭を切り替えた。
神威は空中に灯した火を手の中にそっと包む。
術で生み出された火は、術を使った本人だけ全く熱くないのだ。
神威は姿勢を低くして音を立てない様にゆっくりと進み始める。
見よう見まねで氷雨も続く。
奥から女の声が聞こえて来た。
叫びにも似た声で、洞窟内によく響いている。
近づくにつれてハッキリしてきた声と、卑猥な音。
氷雨は息をのむ。
「やれやれ、この季節はこの時間から元気だな」
静かな声で面倒臭そうに神威が呟いた。
「さて、実力を見せろよお姫様」
馬鹿にしたような風に神威は言って氷雨を見た。
氷雨はムッとして神威を睨む。
神威は鼻で笑って氷雨を自分の前に来させた。
「行って来い、ダメそうなら助けてやる」
それだけ告げて神威が氷雨の背中を強く押す。
まだ心の準備も出来ていないのに、押された体は体勢を崩しながら妖怪のいる空間へと投げ出された。
「わぁっ」
何とか転ぶ事は回避出来た。
慌てて体勢を直して、氷雨は妖怪の方を睨む。
見た瞬間、氷雨の身体に震えが走った。
洞窟の中でも何処からか光が入っているらしくその場所は明るい。
その淡い明るさの中で、氷雨の倍はある大きな黒い妖怪が立っていた。