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はな*つむ

第2章 闇烏

 意識を無くして、気でも狂ってしまえれば楽なのだろう。

 しかしそうしたくても、夫と同じ様に殺されてしまう気がして恐ろしい。

 恐怖が、女の意識を保たせてしまっていた。















「ヤミガラス?」

 初めて聞いた名前に、氷雨は首を傾げた。

「はい、毎年この頃合いに現れる妖怪です」

 そう答えたのは紅蓮。
 彼は退魔師として一人前になった氷雨の補佐をしていた。

 氷雨が幼い時から面倒を見てくれていた紅蓮が補佐になった事は、氷雨にとって喜ばしい事だ。

「なぜこの頃合いに?」

 団子を頬張りながら問い掛けた氷雨の隣で紅蓮は茶をすすり、ふぅっと息をつく。

「奴らの種付けの季節なのです、闇烏(ヤミガラス)は女と見ればそれが妖怪でも人間でも種付けをします」

 それを聞いた氷雨は動きを止めた。

 口に含んだ団子をごくりと飲み込む。

「まぁ、まだ新米ぺーぺーな氷雨様は出会わない様に気を付けるのが良策でしょう、まだ餓鬼にすら苦戦なさるのだから、闇烏なんぞ相手にしたら命がいくつ有っても足りませぬ」

 そう言った紅蓮は、固まる氷雨から食いさしの団子を取り上げ、残りをパクリと食べて氷雨の手に串だけを返した。

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