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はな*つむ

第2章 闇烏

 手の中に返された串に視線を移し、氷雨は表情を歪める。

「さァ氷雨様、道草はここまでにして今日の見回りを再開しましょう」

 紅蓮は立ち上がると氷雨を置いて歩き出す。
 氷雨は串を皿に投げてお勘定を椅子に置くと急ぎ立ち上がった。

「お勘定置いておきます!」

 店番の娘に声を掛け、紅蓮を追う。
店番の娘は「まぁまぁ、氷雨お嬢様ったら」と呟きながら出てきて、去って行く二人にペコリと頭を下げた。


 紅蓮に追い付いた氷雨は彼の隣に並んでその顔を睨み付ける。

「アレは私のお団子だった」

 膨れっ面で訴える氷雨。

「はいはい、そうですね、氷雨様が手を止めていましたので、もう食べないのかと思いました」

 悪びれる事も無く紅蓮は返す。

「絶対確信犯だ! お団子を返しなさい!」

 氷雨にそう言われ、紅蓮はため息をついた。

「そんな無茶な……では、仕事を終えたらオレが白玉ぜんざいをご用意致しますから、職務に集中なさって下さい」

 仕方無しに紅蓮はご褒美を提案する。
それを聞いた氷雨は目を輝かせた。

「本当に? 紅蓮、約束ですよ?」

「はい、約束です」

 約束が纏まり、氷雨は嬉しそうに笑う。
 紅蓮が作ってくれる食べ物はどれも彼女の好物だ。

 ご褒美が決定した氷雨は軽い足取りで見回りを行う。

「あら退魔師様」

「お疲れ様でございます」

 道行く人々が頭を下げる。
 退魔師は都にとって必要不可欠な存在。
妖怪や魔性と渡り合える唯一の存在であり、都に住む人々にとっては英雄のように思われている。

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