
欲望
第2章 拾われ子猫ちゃん愛を知る
近づいて、女の子が濡れないように傘を差しだした
すると、女の子が顔を上げた
ドキッ
小さくなって三角座りをしていたショートカットの女の子が、うるうるとした目でこちらを見たので思わず胸が高鳴った
思い切って声をかけてみる
「傘、持ってないの?」
女の子は答えない
「暗くなると危ないから、お家に帰りな」
女の子はうつむいて、小さく首を振った
「パパとママとけんかでもしたの?」
女の子は、再び首を振る
「まいったな・・・」
そこから全く動く素振りのない様子を見て俺は困ってしまった
こんなとこに一人残して帰るわけにも行かないし・・・
「・・・とにかく、こんなところにずっと居るわけにもいかないだろ?俺の家、すぐそこなんだ。来るか?」
女の子はじっとこちらを見つめている
首を振らないってことは来るってことか・・・?
俺は、女の子に手を差し出した
すると、ちょっと迷ったような顔をしてからおそるおそる俺の手をとった
女の子の手はすっかり冷え切っていて、そこに居た時間の長さを物語っていた
俺はその手をぎゅっとにぎり、自分の家へ向かって歩き出した
俺の家は会社のすぐそばにある高層マンションの最上階だ
