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複雑なトライアングル

第1章 ♥入学試験

数十分経った。


私のほうはやっと終わった。

女の子のほうはもうとっくに終わってる。


「お疲れ様でした、二人とも。
 結果は一時間後にお知らせします。
 次の部屋は栞に書いてあります」


と、先生たちは立ち去った。


私は早速女の子に話しかける。

こんなにかわいい子が近くにいて、

話しかけないとかおかしい!


「ども!初めましてだよね?
 私はエレノア。受かったらよろしく!」


いきなりの自己紹介のせいか、

女の子はそっぽを向いてしまう。



「私の息、そんなに臭い…?」

「…全然」


お、しゃべったしゃべった。

嬉しさのあまり、思いっきり話を広げた。


「君の名前は?」

「リゼ」

「へえ、かわいい! 私の名前なんてあれだからな~」

「……そうかな」

「かわいいよ! あ、私のことはノアって呼んでいいよ。
 ちょっと長いからさ」


エレノアは少し照れくさそうに言った。


「…でも、私の本名は02」

「ぜろ…つー? かっこいいね」


とにかくほめまくる。

こういう友達をつくるのには必須だ。


「改名したの? あ、嫌だったら答えなくていいよ」

「ううん……リゼロツー。これが本名」

「まさかの合体!?」


リゼはこくんと頷いた。

そして、無意識にドアを開く。


エレノアはそれについていく。



「私の名前、たくさんあるの」

「へ~、どれが本物かわかんなくなっちゃうね」


今度は何も返してくれなかった。

でも、そんなことでは落ち込まない。


リゼは自動販売機のボタンを押した。


「親が、長いのをつけたの」

「たくさんじゃなくて?」

「長いからたくさん。本名はない」


なんだかさっきから曖昧だ。

あんまりわからないな。


「じゃあ、それ全部言ってみてよ」


リゼは缶を手に取り、開けた。

そして口を開く。


「シェイドルレンザルックリゼロツーリュリュカレファ」


まるで呪文のように聞こえた。

よく暗記したなぁ…


というか、早口すぎてよくわからん。



「私は普通にエレノア・ブラックエラー」

「普通って、いいですね」


何だろう…

その名前のせいで、おかしくなっちゃった?


心臓が痛む。

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