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その手で触れて確かめて

第5章 小さな恋の物語(O × O)



「俺、跡取り息子なんだよ。」



選べない人生なんだと、

そう言って、寂しそうに笑った。



「彼」には申し訳なかったが、


そんな表情にさえ見惚れてしまう。



「あ…と、君、このクラスだっけ?」


「ん?あ、ああ、俺、岡田…岡田准一。」


「俺、大野智。よろしく。」



屈託のない笑顔を浮かべながら、


大野智は綺麗な手を目の前に差し出した。



「よ、よろしく…。」



眩しいぐらいの笑顔と、

見た目通りの女の子のように柔らかい手の感触にどきどきしながら手を握りしめる。


すると、何か思い出したように、大野智はフフっと笑みを溢した。



「手汗、スゴいね?」


「えっ?あっ!?ご、ごめん!!」



慌てて手を引っ込めて、


ズボンで手を拭いた。



「それやるなら握手する前じゃない?」


「そっ…そっか。そうだよな?ははっ!!」



それからというもの、


俺と大野智は常に一緒にいるようになり、


幼馴染みの雅紀といる時間よりも多くなった。



「友達」としての距離は縮まったが、



同性ゆえ、それ以上に特別な関係になるなんて考えられるはずもなく、



ただ、イタズラに時間を過ごしていた。





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